人事労務ニュース/トピックス
坂本工業では、年次有給休暇(以下、「年休」という)の付与する基準日を全従業員4月1日に統一している。今回は育児休業を取得したケースや特別休暇を取得したケースがあることから、その付与に関して社労士に確認することにした。
こんにちは。当社では全従業員について、4月1日に一斉に年休の付与を行っていますが、育児休業を取得したり、特別休暇を取得したり、様々なケースがあることから、年休を付与することとなる8割要件の計算方法を確認させてください。
この8割要件の計算は、出勤率で行います。この出勤率は、出勤日数(算定期間の全労働日のうち出勤した日数)を全労働日(労働義務が課せられている日のことで、就業規則等で定めた休日を除いた日数)で割って計算します。休日出勤した日については、もともと労働義務が課せられていない日の勤務になるため、出勤日数と全労働日には含めず、遅刻や早退があったとしても、その日は出勤しているため、出勤日数に含めます。
なるほど。遅刻や早退があっても、出勤日数に含めるのですね。
はい。そして、この出勤率を計算する際に注意が必要なのは、「全労働日から除外される日」と「出勤したものとして扱う日」が定められていることです。まず、「全労働日から除外される日数」には、以下のものがあります。
- 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
- 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日
3年前に、新型コロナウイルス感染症の影響により、会社の判断で従業員を休業させたことがありましたが、このような場合、使用者の責に帰すべき事由によって休業した日に該当するということですね。
そうですね。次に、「出勤したものとして扱う日」としては、以下のものがあります。
- 業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日
- 労働基準法に規定する産前産後休業を取得した日
- 育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日
- 年休を取得した日
例えば、付与の要件を判断する算定期間にすべて育児休業を取得した従業員がいた場合、全労働日数に出勤したものとして取り扱うため、出勤率は10割になるということですね。
そのとおりです。慶弔時に取得できる特別休暇については、会社独自の制度になるため、それぞれの会社で出勤率の計算の際にどのように取り扱うかを決めることになります。一般的には年休と同様に、出勤したとみなして出勤率を計算することが多いかと思います。
特別休暇については、当社でも出勤したとみなして計算していますね。
先ほどの「全労働日から除外される日数」の中に、子の看護休暇や介護休暇がなかったのですが、この取扱いはどのようになるのでしょうか?取得するケースは稀ですが、確認しておきたいです。
するどい質問ですね。おっしゃるように、上記の内容にないため、こちらも特別休暇と同じように、それぞれの会社で出勤率の計算の際にどのように取り扱うかを決めることになります。一般的にはこれらの休暇も、出勤したとみなして出勤率を計算していますが、育児・介護休業規程にどのように取り扱うのか、定めをしておいた方が明確ですね。
わかりました。そのほか、出勤率を計算した結果、前年4月には8割要件を満たさず、年休が付与されなかった従業員が、今回、8割要件を満たした場合の勤続年数の考え方はどのようになるのでしょうか。
年休の付与は、雇入れからの勤務継続年数で判断するため、8割要件を満たさなかった年も勤続継続年数に含めて、付与日数を決めます。
なるほど。従業員にとって年休の付与や取得に対する関心は高いことから、誤りのないように管理していきます。
年10日以上の年休が付与される従業員について、付与された年休の日数のうち5日は会社が時季を指定するなどして取得させることが義務となっています。この5日については、半日単位の年休はカウントに含めることができますが、時間単位の年休についてはカウントに含めることができません。取扱いを誤解しているケースが見られることから、正しいカウントができているかを確認し、誤っており、5日に満たない状況となっている場合は早めに年休を取得してもらいましょう。
■参考リンク
厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。