人事労務ニュース/トピックス
文書作成日:2024/05/23
助成金制度は年度単位で予算が立てられているものが多く、年度初めに多くの助成金の創設・改廃が行われます。今回は、企業が比較的活用しやすい助成金をいくつかご紹介します。
※文中の表は全てクリックで拡大されます。
両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりを行う企業を支援するものです。様々なコースがありますが、2024年4月より、「柔軟な働き方選択制度等支援コース」が新設されました。なお、この「柔軟な働き方選択制度等支援コース」は中小企業のみが対象です。
(1)概要
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、育児を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度(柔軟な働き方選択制度等)を複数導入し、制度を利用した労働者に対して支援を行った場合に助成金が支給されるものです。
主な支給要件は、以下の通りです。
- 柔軟な働き方選択制度等を2つ以上導入する。
- 柔軟な働き方選択制度等の利用について、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」(プラン)を作成することにより支援を実施する方針を社内周知する。
- 労働者との面談を実施し、本人の希望等を確認・結果記録の上、業務体制の検討や制度利用後のキャリア形成円滑化のための措置を盛り込んだプランを作成する。
- 制度利用開始から6ヶ月の間に、対象となる労働者が柔軟な働き方選択制度等を一定基準以上利用する。
上記の支給要件にある「柔軟な働き方選択制度等」とは、以下の5つの制度であり、このうちの2つ以上の制度を導入する必要があります。なお、これら制度等は、子どもが3歳以降小学校就学前までの労働者が利用できる制度として設ける必要があります。
- フレックスタイム制/時差出勤制度
- 育児のためのテレワーク等
- 短時間勤務制度
- 保育サービスの手配・費用補助制度
- 子の養育を容易にするための休暇制度/育児・介護休業法を上回る子の看護休暇制度
助成金を受給するためには、制度利用開始から6ヶ月の間に、対象労働者が、5つの制度ごとに定められた利用実績の基準を満たすことが必要です(下表参照)。
(2)支給額
導入した制度の数に応じ、下表の助成額が支給されます。
国会で審議が進み、来春の施行が予定される改正育児・介護休業法には、この助成金にある「柔軟な働き方選択制度等」の導入を求める内容が盛り込まれています。法改正に先行して、労働者の育児と仕事の両立の支援策を検討する場合には、このような助成金も活用していきたいものです。
エイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者の労働災害防止対策、労働者の転倒や腰痛を防止するための専門家による運動指導等、労働者の健康保持増進のために設けられています。2024年4月より、「転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース」が新設されました。なお、このエイジフレンドリー補助金は中小企業が対象です。
(1)概要
このコースは、労働者の転倒防止や腰痛予防を目的としたもので、専門家等による運動指導プログラムに基づいた身体機能のチェック、専門家等の運動指導等に要した費用が補助対象となります。なお、運動器具など物品の購入は対象にならないことに注意が必要です。
以前からある「高年齢労働者の労働災害防止対策コース」は、高年齢労働者(60歳以上)を常時1人以上雇用していることが必要ですが、このコースはすべての労働者が対象で、年齢制限はありません。
(2)補助金額
補助率は上記の経費の4分の3で、上限額は100万円です。なお、このエイジフレンドリー補助金には3つのコースがあり、複数コース併せての上限額は100万円となっています。また複数コースで申請する場合は、希望コースをまとめて申請することが必要です。
このエイジフレンドリー補助金の申請期間は、2024年5月7日から10月31日までとなっています。
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組みを実施した事業主に対して助成する制度です。このキャリアアップ助成金には6つのコースがありますが、この中で「正社員化コース」は、2023年11月29日に拡充が行われています。2024年4月の変更はありませんが、活用を検討される企業が多いことから確認します。
(1)概要
「正社員化コース」とは、就業規則等で規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されるものです。有期雇用労働者以外にも、無期雇用労働者を正社員に転換した場合、また、正社員への転換だけでなく、多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)に転換した場合等も「正社員化コース」の対象となります。
対象となる主な労働者は、以下のいずれかに該当する労働者です。
- 賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6ヶ月以上受けて雇用される有期雇用労働者または無期雇用労働者
- 6ヶ月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者
(2)支給額
上記の支給額の他に様々な加算額が設けられており、例えば、派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合は1人当たり285,000円、対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父で、正社員化前の雇用形態が有期雇用労働者の場合1人当たり95,000円、無期雇用労働者の場合1人当たり47,500円となっています。
2024年4月1日にキャリアアップ助成金Q&Aが改訂されています。活用を検討される場合は、事前に目を通しておくとよいでしょう。
助成金・補助金には予算額が設けられているため、いざ活用しようと考えたときに、受付が終了している可能性があります。活用にあたっては、最新情報を確認しましょう。
■参考リンク
厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
厚生労働省「エイジフレンドリー補助金について」
厚生労働省「キャリアアップ助成金」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。